スターブランドCLUBについて

スターブランドTIMES

家族のチカラで業績回復 日本型ファミリービジネスのお手本

2012年02月01日

「小さなブランド会社」になるということは、
いわゆる「下請け」から脱するということでもある。

「大手の仕事を引き受けているから安心」という考え方は、今の世の中、かなり危険。その大手のM&Aや、コストダウン方針ひとつで、"小さな下請け会社"は簡単に吹っ飛んでしまう。

印刷業界も、そんな「風」にさらされている場所であり、大手依存症だった小さな町のプリント会社も、「落ちてくる仕事を待つ」という経営スタイルに待ったなしで進化が求められるようになった。

「下請け脱出」へのチャレンジ

「下請け脱出」へのチャレンジ

「落ちてくる仕事を待っていたら・・・」、全盛期あった「10」の売上が「4」になってしまった太田印刷(石川県白山市)は、まさにそんな流れの象徴だ。「どうにかしなきゃ」「なんとかしなきゃ」、そう思っていても、どう動いて良いのか分からない。まわりの同業者の店じまいは加速。社長夫人で、太田印刷の専務の肩書きを持つ長谷川美知子さんは途方にくれていた。まだ「2000年」になるかならないかの話だ。

そんな最中、長谷川さんは、娘さんが、旦那さんにネットでスーツを買ったが、サイズが合わないという話を耳にした。「返品するの?」と、従来の発想で聞いた長谷川さん。娘さんはなんと「オークションに出す」と言う。「オークション???」世代問わず、今ほど誰も インターネットに詳しくなかった時代、当然長谷川 さんは、そんな世界があることにビックリ。

「これは (インターネットは)印刷の仕事を日本全国から得るのにも使えるのでは?」と思い、早速行動に移してみた。石川県は、その当時、PCの普及率が全国4位。21世紀になったばかりだし、町の小さな印刷屋さんとしては、大変な「時代の先取り」だった。

こうして、「インターネット」と、頻度高い「東京への出張」、そして「奥さん力」をツールに、太田印刷の「攻守交替」は始まった。

「強み」は、目と鼻の先に

「でも、石川県の小さな印刷会社さんが、一体どこまでやれるの?」立地的なことも考え、そう思う人も多いはず。でも、データ受送信のインフラが整えば、印刷屋さんが“近所”である必要はない。どこにあったって構わない。

「逆に東京の会社さんは、オフィスのスペースに限りがあるので、大量の印刷をする場合は一括納品せず、石川県のウチの倉庫にストックしてあげます。送料は別途かかりますが『必要なとき、その都度送る』という形は、お客さまに大変喜ばれています」ということで、この地理的な問題を、太田印刷は、逆に「強み」に置き換えた。価格も安価。クオリティそのまま。大抵の東京の会社は、その見積もりに納得する。

「弱み」だって発想ひとつで「強み」になります。

「ファン」を増やした、この“想い”

もうひとつ太田印刷の「強み」を挙げるとするなら、「お客さま以上のファンがいる」という点だ。太田印刷は、長谷川美知子さん他、旦那さんで社長、印刷職人である奥さんの後輩と、パートとして働く妹さんと「お隣のお隣さん」、そして二人の娘さんという“ファミリービジネス”。だからこそ出来る「あたたかい仕事」が、都内に“お客さま以上のファン”をつくっている。人は、どうして太田印刷に魅了され、長い付き合いをするのか?それは、この長谷川さんの一言に集約されている。


「わたしは、お客さまである会社さんの中で、印刷を任されている子が、何かを失敗して上司に『怒られる』のが可愛そうで仕方がないのです。その子が怒られないように、わたしたちは仕事をしてあげたいのです」


大きな会社の言う「プロフェッショナリズム」とは違うかも知れない。でも、小さな会社がファンをつくるには十分な想いだ。ファンに支えられ、「4」まで落ち込んだ売上は、今期、ついに全盛期の「10」を超える。

「小さなブランド会社」が目指すべきは“ファンづくり”

家族のチカラ

長谷川美知子さんは、その中での役割は“太田印刷のフロントマン”。言い換えれば、パブリックリレー ション的な部分を担う、会社の「顔」である。東京に頻繁に出向いては、上場企業を含め、今いるお客さまのケアにまわる。でも、実のところは、「太田印刷の外交活動をはじめる前までは、東京なんて来たこともありませんでした。はじめて羽田に降り立ったとき、家族に電話をしたら、『お母さん、お願いだから(迷子にならないように)アポの時間まで、空港にいて』なんて言われてたくらいです(笑)」。それが今では、都内在住者よりも、よっぽどアクティブに街を縦横無尽に歩き回る。最近では、都内で成功秘話を講演するまでに なった。

美知子さんに聞いてみた。太田印刷のフロントマンとして全国を飛び回り、今まで有り得なかったような案件を取ってきては、ファンを増やしている美知子 さんの行動について、社長である旦那さんは、どう 思っているのかを・・・

「うちの旦那さんは凄いんです。普段は厳しいし、面と向かっては言わないけど、わたしがいないところでは随分この5年間のことは喜んでくれているみたいで、いろんな人にわたしのことを褒めてくれているみたいです(笑)」

ヨーロッパの小さな町にあるような家族経営を見ているようで、とても微笑ましく思えた。

「家族」は「チーム」

取材協力:有限会社太田印刷 − 長谷川美知子
(2007年2月号より)

  • Home >
  • スターブランドCLUBについて >
  • スターブランドTIMES >
  • スターブランドTIMES >
  • 家族のチカラで業績回復 日本型ファミリービジネスのお手本