寿司、スキヤキ、天ぷら・・・、それに加えて、日本のTVコマーシャルでおなじみの「日本酒ブランド」を、熱燗でキュイッ。1970年代からポツリポツリと登場してきたスウェーデンの日本料理店は、大抵どこもこんなもんだった。生粋のスウェーデン人で、グラフィックデザイナーのオーケ・ノードグレン(Ake Nordgren)も、それらのお店に行く機会は幾度もあったが、その都度「まあ、こんなものか・・・」という感想しか浮かんでこなかったという。が、90年代に入り、仕事で年3回ほど“本物のニッポン”に来るようになってビックリ仰天。「こんなにも食文化が多様な国があるなんて」と、来日のたび、オーケは嬉しいショックを受けた。「スウェーデンで『日本のイメージ』と言えば、スシ、スモウ、ゲイシャ、勤勉・・・、それと『高い』ネ(笑)。でも、日本には、もっともっと自慢できるものが一杯ありますネ!スウェーデンから友人を連れてくると、『オーケ、これがニッポンという国なのか!?』と、みんな唖然とします。あの頃の僕のようにネ」。特に感銘を受けたのが「日本酒」。ソムリエの資格も持っていたオーケにとって、日本酒との出逢いは必然だったのかも知れない。「四半世紀ものあいだ、スウェーデンの日本料理屋で飲まされていたアレは『何なんだ?』と言いたくなります。僕こそが、この日本の食文化や魅力をスカンジナビアに伝える人なんじゃないかと思い・・・」、デザイナーを辞め、日本酒の輸入と卸販売、そして居酒屋をスタートした。その名は・・・
スターブランドTIMES
スウェーデンで話題の"日本ブランド"
2011年11月01日「これだ!」−ある日目覚めた使命感
AKEBONO UNLIMITED
・・・その会社の名前は「AKEBONO UNLIMITED(アケボノ・アンリミテッド)」。名前の由来は、「僕の名前は『AKE(オーケ)』ですが、英語読みでは『アケ』です。それを日本っぽくしたら『アケボノ』。日本酒や、日本文化をベースとしたビジネスは、今後も無限の可能性を秘めています。だから会社としては登記上“有限(リミテッド)”だけど、あえて『アンリミテッド(無限)』(笑)」。デザイナーだけあって、そのビジュアル面も、古臭くなりがちな日本のイメージを根こそぎ一新。名刺、HP、各種ツールは、研ぎ澄まされている。これらは、日本酒や日本文化に全く興味がない人でも、そのデザインに魅了されて、『AKEBONO』と接触を持つほどのパワーを持っている。
「働き方」と「生き方」の一致で、家族をシアワセに
そのデザイン性だけで今の地位を築いたわけではない。いつも底抜けに明るいオーケだが、もともと市場がなかったプレミアム日本酒市場をスカンジナビアの地につくるのには、それなりの苦労があった。「ジャーナリストを呼んで試飲会をやったり、調理学校で日本食以外とのマッチングをレクチャーしたり。卸先のレストランでも様々なイベントやプロモーションを行ったり・・・。もちろん今でもやっています」。本格的にアケボノを始めて5年。ビジネスは目下絶好調。今では、スカンジナビアで注目される“小さなブランド”に成長した。またオーケ本人もメディアに引っ張りだこ。日本酒の伝道者として、その地位を確固たるものにしている。「まっすぐな使命感」「事業の絞込み」「表現力の巧みさ」「プレミアム日本酒と、居酒屋という新しいカテゴリーの構築」等々、アケボノがブランド化に成功した要因は幾つか挙げることができるが、何よりも注目すべきは、オーケの「働き方」と「生き方」の一致。「今の仕事をしていてシアワセですか?」の問いに、「僕自身だけじゃなく、家族も皆シアワセです。なんといっても、僕がこんなに楽しそうに仕事をしているからネ!」と答えてくれた。
ファンが増える理由:「FUN」=「FAN」
そんな楽しそうに仕事をしているオーケのファンはスウェーデンはもちろん、この日本にも多い。理由はカンタン。「自分の仕事を心底愛している人」を見ることは、誰にとってもシアワセな気分になれることだから。
たびたび日本に来ては、電車を乗り継ぎ、全国の“小さな酒造”に足を運び、地元の人と触れ合いながら、買い付けを行う。自分でセレクトした日本酒で、完璧なポートフォリオを組むことに情熱を注ぐ。スウェーデンにいれば、常に大使の役目。日本酒の素晴らしさや、日本文化の多様さを、おもしろおかしく、そしてわかりやすく伝道する。
:::インタビュー後記:::
数年前、僕が埼玉にある小さな酒造のコンサルティングを行っていたときに考えた戦略が、「海外で現地の人に評価をさせ、“ハク”をつけてから日本へ凱旋させることで、ブランド力をアップさせる」というものだった。そんなプロジェクトの最中、小さな雑誌の記事で見つけたオーケと『AKEBONO』。早速コンタクトを取り・・・、今に至ります。あの頃は、まだ駆け出しだったオーケも、今では超有名人。久しぶりに再会して、あらためて「人間、信じた道を突き進むと、良いことが起こるんだな」と思い、こちらまでシアワセな気持ちになりました。
取材協力:AKEBONO UNLIMITED代表 オーケ・ノードグレン
(2006年11月号より)